[活動紹介] 事例紹介

第十四回「日中韓文化交流フォーラム」
<実施期間:2018年9月15日(土)~17日(月)>

  • 1. 全体会議
    2018年9月16日(日)
  • 2. 会場
    中国・貴州省・貴陽市 貴陽孔学堂
  • 3. テーマ
    「茶文化の潜在力を掘り出し、人類運命共同体の構築に寄与する」
  • 4. 出席者
    [日本]
    委員長 :宮廻 正明
     (文化財保護・芸術研究助成財団 理事長)
    専門家 :佐藤 道信
     (東京藝術大学美術学部 教授)
    :門司 健次郎
     (元カナダ大使、元ユネスコ大使)
    委 員 :社 三雄
     ((株)伊藤園 専務取締役)
    :小宮 浩
     (文化財保護・芸術研究助成財団 専務理事)
    :仙波 志郎
     (文化財保護・芸術研究助成財団 参与)
    事務局 :丸山 純一
     (文化財保護・芸術研究助成財団 事務局長)
    [中国]
    委員長 :林  怡
     (中国人民対外友好協会副会長)
    委 員 :朱  丹
     (中国人民対外友好協会日本部副主任・中日友好協会副秘書長)
    :唐 瑞敏
     (中国人民対外友好協会アジア・アフリカ部副巡視員)
    専門家 :陳 娟英
     (アモイ博物館副館長、教授)
    事務局 :張 孝萍
     (中日友好協会友好交流部部長)
    :洪  磊
     (中国人民対外友好協会アジア・アフリカ部副処長)
    :董 丹丹
     (中日友好協会友好交流部職員)
    [韓国]
    委員長 :鄭 求宗
     (韓日文化交流会議委員長、東西大学名誉教授)
    委員 :孔 魯明
     (元外交通商部長官、元駐日本国韓国大使)
    :權 丙鉉
     (韓中文化青少年協会会長、元駐中国韓国大使)
    :李 元泰
     (韓中友好協会副会長、錦湖アシアナグループ顧問)
    専門家 :朴 東春
     (東アジア茶文化研究所所長)
    事務局 :李 康民
     (韓日文化交流会議事務局長、漢陽大学教授)
    :徐 鉉宰
     (韓中友好協会事務局長、錦湖アシアナ文化財団執行役員)
    :文 閏貞
     (韓中文化交流会議事務局職員)
  • 5. 討論内容
    (1)各国委員長代表発言要旨

    [中国・林 怡委員長]

    フォーラムのテーマは「茶文化の潜在力を掘り出し、人類運命共同体の構築に寄与する」であり、日中韓三カ国共通の認識として、会話をしながら「茶」を飲むことによって「和」がつくられることがあげられる。その和によって文化交流、友好関係が築かれる。

    [日本・宮廻正明委員長]

    中国から日本にもたらされた「茶」は、最初は薬として、次に嗜好品として受け入れられ、多くの日本人に愛されるようになった。
    日本人と「茶」の関係において究極の成果は、芸術、道徳、哲学、宗教など文化のあらゆる部面を含んだ総合芸術としての茶道の完成である。

    [韓国・鄭 求宗委員長]

    「茶」を飲むことは日中韓三カ国の共通文化である。また、茶碗等陶磁器の製作技術も同様であり、日中韓における茶文化は東アジアにおける茶文化の基礎となっている。

  • (2)各国専門家特別レポート要旨

    [中国・陳 娟英氏(アモイ博物館副館長、教授)]

    茶文化において「和」は日中韓三カ国共通の認識であり、三カ国の茶文化の特徴は下記のとおり。
    中国
    ・茶を飲む事で「和」を実現
    日本
    ・ 禅を現在の形の茶道に近づけたのは村田珠光で、茶の形式よりも茶のかかわりかた、心構えを重視した。
    ・茶道は、千利休の定めた茶道の心得を示す標語「和」、「敬」、「清」、「寂」を表す「四規」を重要視している。
    韓国
    ・茶は6~7世紀に中国から伝来。
    ・茶は寺院を中心に広まり、仏教を保護した高麗の朝廷では日常の喫茶をはじめ、各種儀式で茶が飲まれていた。

    茶道具について
    ・青磁器等茶器を韓国、日本へ輸出
    ・日本では、天目茶碗等の中には国宝、重要文化財に指定されているものがある。
    ・茶道具を通して東アジア文化圏における茶文化交流が盛んになっている。

    [日本・佐藤 道心氏(東京藝術大学美術学部 教授)]

    テーマは「岡倉天心『茶の本』に見る日本人の美意識について」とし、次の内容の話があった。
    ・岡倉天心について
    近代日本を代表する思想家の一人で、その活動は、文部官僚から、美術教育、博覧会、博物館、文化財保護、美術史学、「日本美術史」編纂と、きわめて多岐にわたり、まさに現在に続く近代日本の「美術」の制度をつくった人物である。
    ・日本でのお茶の歴史について
    815年(平安時代)永忠という僧侶が嵯峨天皇にお茶を点じたのが最初で、僧侶栄西が1191年(鎌倉時代)中国からお茶の種を持ち帰り栽培し、当初はむしろ薬として飲んでいたが、以後、お茶は禅宗文化の一環として広まった。
    そうした中で、現在の日本での「茶の湯」にいたる、作法を重視した儀式性の強い喫茶(きっさ)法を確立したのが、16世紀の千利休であった。
    ・日常生活でのお茶
    現在のお茶の葉を煎じて飲む喫茶法は、日本では18世紀中頃に始まり、これが庶民に広まったようである。近代になるとお茶は輸出製品の主力であり、その生産量からしても、すでにお茶は庶民生活に広く普及していた。
    ・茶文化の世界発信
    「国際茶文化交流展」は、東京芸術大学と中国の精華大学美術学院が主催し、「お茶」をキーワードに、中国、韓国、日本のお茶文化を語ったものである。このように現代のアートプロジェクトでは、お茶のもつ「人と人をつなぐ」役割と機能が注目され、前面化している。その点、総合芸術としてのお茶文化がもつ可能性と潜在力はきわめて広い。

    [韓国・朴 東春氏 (東アジア茶文化研究所所長)]

    テーマは「宋と高麗との茶文化交流」とし、次の内容の話があった。
    ・中国宋の時代は、貴族から一般庶民にいたるまで茶を飲むことが日常化した時代であった。
    ・宋に渡った僧侶が仏教とともに高麗に伝え、初期に伝えられた中国茶は仏様への供養のためのものであったが、9世紀以降は王室、貴族、僧侶、官僚、文化人へと拡散していった。
    ・禅宗の僧侶たちの修行において、睡魔を払うために茶を活用し、茶を飲みながら精進したという話が残っている。寝ずに修行し夕食も摂らなかったが茶を飲むことは欠かさなかった。
    ・高麗の知識人たちにより宋の茶文化が高麗に浸透していき、高麗の茶文化は禅宗の僧侶たちが主導し、広めた。
    ・禅宗の勢力拡張により茶文化が王室の貴族層、官僚、文化人へと広まった。
    ・国家における重要事項を処理する際、まず茶を飲む制度「茶時」があった。
    ・10世紀末以降高麗は、宋の茶文化の模倣から脱して高麗の独自性を構築し、青磁の茶碗や様々な茶を栽培し、白茶が流行し高麗独自の茶文化が栄えた。
    ・11~12世紀には高麗は宋と肩を並べる茶文化を創り上げ、青磁が発達した。

  • (3)貴州茶文化についての特別講演

    [中国・周 開迅氏(貴州省茶文化研究会副会長)]

    1980年、貴州省晴隆県で発見された3粒の茶の種の化石は100万年前のものとされ、現在までに発見された世界最古の茶の種である。貴州には高木の茶樹が多く自生しており、野生茶樹が中国でも最も多い省の一つである。古木の野生茶樹による60万㎡を擁する大規模な古代茶樹園が残されている。また、歴史的機械・器具の保存にも力を入れている。
    貴州省では中国高品質緑茶を作るため、無農薬・有機自然栽培茶やその再加工品などの生産基地になるためにさまざまな工夫が凝らされるようになっていると同時に、高品質緑茶栽培の研究及び研究者の育成、省外や国外の消費市場への対応を拡大させている。

  • (4)委員討論会

    討論会に先立ち、中国・全国対外友好協会日本工作部副主任、中日友好協会副秘書長 朱丹氏から、テーマについて説明があった。

    各国委員発言要旨

    [日本側]

    ・「茶」は世界で803億ドル/年の取引があり、年3%の割合で伸びており、さらなる伸びが予想される。
    ・茶の文化性、健康性、コミュニケーション性等、茶の効用が世界の人に認知されてきている。例えば、アメリカでは砂糖入りの飲料しか売れないと言われていたが、緑茶の市場が増えてきて一般の人々に認知されてきている。
    ・日本ではティーバック、インスタントの需要が多く世界においても同様であると思われる。日中韓協力して世界市場にでていきたい。
    ・近年の健康志向、和食ブームからお茶が世界に広がっている。一例とし、半導体産業や大手コンピューターメーカー、ソフトメーカー、ハイテクベンチャーなどを中心としたIT企業、そして研究所や関連企業が密集しているシリコンバレーにおいてもコーヒーではなくお茶が飲まれている。
    ・ペットボトル入りのお茶がでてきたことにより、世界中でお茶を飲んだことのない人が手軽に飲むことができるようになった。将来的には日本式の急須に入れて飲む方法を世界に広めたい。

    [中国側]

    ・茶の中心的思想は「和」であり、茶とともにこの思想を世界に発信できるものである。
    ・今年は日中平和友好条約締結40周年を迎えるにあたり、改めて茶と平和に理念を思い起こし日中友好に努力したい。
    ・日中韓の文化交流は大切だが、特に若者の文化交流を今後どのように推進するか考えていきたい。
    ・中国の事情として、日中韓の文化交流事業は、地方政府の交流事業と結びつけ方針を一致させる必要があり、中国人民対外友好協会は努力したい。そして、日韓とともに三カ国の発展に努めたい。

    [韓国側]

    ・茶文化の中心的思想は「調和」。
    ・イギリスでは喫茶の風習が広まり、19世紀から中国から紅茶の輸入が始まり大量に輸入することになった。これが原因でアヘン戦争が起こり、お茶で戦争が起きたのではなく「和」を忘れたため起きたものである
    ・韓国では近年野生茶が注目されている。韓国茶の発祥地、河東(ハドン)の茶畑で楽しめる「河東野生茶文化祭」は多様な茶と茶文化を体験するイベント等が開催されている。

  • 6.文化交流イベント
    • (1)日中韓文化交流フォーラム会歌「わたしは未来」披露
      合唱:貴州省児童合唱団
      会場:貴陽孔学堂Ⅱ期第一会議室
      日時:9月16日(日)午前9時30分
    • (2)演劇:「此心光明(吾が心、光に向かい)」鑑賞
      会場:貴陽孔学堂陽明大講堂
      日時:9月16日(日)午後8時~10時


    出席者全員での記念撮影


    貴州省児童合唱団が会歌「わたしは未来」を披露


    開会の挨拶をする宮廻理事長


    委員討論会で意見を交わす三カ国委員長

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