第六回「日中韓文化交流フォーラム」
1. 日時 2010年11月16日 2. 会場 奈良・薬師寺「慈恩殿」 - 3. 出席者
[日本] 委員長 :小倉和夫(国際交流基金理事長) 委員 :松尾修吾(国際交流基金理事) 〃 :玉井賢二(東京藝術大学特任教授) 〃 :大海渡憲夫(国際交流基金参与) 〃 :村木茂(文化財保護・芸術研究助成財団事務局次長) [中国] 委員長 :劉徳有(中国対外文化交流協会常務副会長) 委員 :井頓泉(中国人民対外友好協会副会長、中日友好協会副会長) 〃 :馮佐庫(中国人民対外友好協会副会長、中韓友好協会副会長) 〃 :程海波(中日友好協会友好交流部部長) 〃 :洪磊(中韓友好協会職員) 〃 :鄭李旦(中日友好協会政治交流部職員) [韓国] 委員長 :鄭求宗(韓日文化交流会議委員長) 委員 :孔魯明(世宗財団理事長、前駐日大使、前外交通商部長官) 〃 :權丙鉉(韓中文化青少年協会「未来の森」代表、前駐中大使) 〃 :李元泰(韓中友好協会副会長) 〃 :李康民(韓日文化交流会議事務局長) 〃 :趙有情(韓日文化交流会議事務局) -
4. 内容
テーマ:「東アジア共同体形成における文化の役割-過去・現在・未来-」開会にあたり、小倉和夫・国際交流基金理事長が「奈良は1300年前から国際交流の場所であった。現在、日中韓においてはそれぞれに政治的な問題を抱えているが、そんな時期にこのような会議が開かれたことには大きな意味がある」と挨拶。中国の劉徳有・中国対外文化交流協会常務副会長が「来年は新しいラウンド(3巡目)となる。今は、微妙で複雑な時期だが、新しい情報を入れ、新しい形を作り出し、三カ国をさらに発展させていくために、ともに努力をしていきましょう」と話し、韓国の鄭求宗・韓日文化交流会議委員長が「1300年の歴史のある奈良の地は、歴史的に中国、韓国と縁が深く、このフォーラムの創始者である故・平山郁夫先生ゆかりの地でもある。このような地で、似ているが違う三国の文化について、活発な話し合いを行うことは大変意義のあることだ」と述べた。 続いて、小倉氏、宮田亮平・文化財保護・芸術研究助成財団理事長/東京藝術大学学長、劉氏、鄭氏による代表発言があり、休憩をはさみ、自由討論が行われた。その内容は、
(1) 日中韓三カ国では、相互交流を一層増進するために文化交流が大切。 (2) 東アジアの文化遺産を三カ国が共有することにより、世界に貢献できる。 (3) 各国の社会で多文化共生が大事になってきていることを踏まえ、それを進展させる文化交流事業を行う。 (4) インターネットの発達を新しい交流の手段ととらえ、多角的視野で新しい交流を行う。との現状を踏まえ i 新しい形での共同制作、共同公演の促進 ii インフラ整備(文化センターなどの充実) iii 青少年交流の増進 iv デジタル技術・科学技術、文化活動、福祉、環境に結びついた文化事業を進める。 以上の実践を通し、東アジア文化共同体形成の可能性を追求していくことを確認しあった
- 5. 関連イベント
(1) 「日中韓美の競演展」(平成22年11月16日~18日 於:薬師寺・まほろば会館2F) 三カ国の工芸作家の作品を展示。作品に直接手を触れて鑑賞することができるという あまり例の無い、特別な展覧会となった。[出品作家]
日本 :宮田亮平(金工:東京藝術大学学長) 三田村有純(漆芸:東京藝術大学教授) 大樋年雄(陶芸:東京藝術大学講師) 須田賢司(木工:東京藝術大学講師) 佐伯守美(陶芸:文星藝術大学 講師) 田口義明(漆芸:東北芸術工科大学 講師) 中国 :周尚儀(金工:清華大学美術学院 教授) 周剣石(漆芸:清華大学美術学院 副教授) 洪興宇(染色:清華大学美術学院 副教授) 韓国 :徐道植(金工:ソウル大学校 美術大学 教授) 辛光錫(陶芸:ソウル大学校 美術大学 教授) 玄智然(彫刻:ソウル大学校 美術大学 講師) 朴晟源(硝子工芸:韓国芸術総合学校 教授) (2) 講演会・シンポジウム「似ているが違う『日本・中国・観光の芸術文化』
(平成22年11月16日 於:薬師寺・まほろば会館1F)ⅰ) 講演会 (1) 「日本の美」 三田村有純 (2) 「中国の美」 張夫也(中国工芸文化史:清華大学美術学院 教授) (3) 「韓国の美」 周炅美
(韓国文化論:釜慶大学校 人文社会学研究所 専任研究教授)(4) 「ヨーロッパが観た、東アジアの芸術文化」井谷善恵
(欧州芸術交流史:東京藝術大学 講師)三田村有純・東京藝術大学教授が「日本の美」をテーマに、張夫也・清華大学美術学院教授(中国)が「中国の美」をテーマに、周炅美・釜慶大学校人文社会科学研究所専任研究教授が「韓国の美」をテーマに、それぞれ講演を行った。
各国の「美」について、「日本の文化は、縄文時代(大陸を離れ、列島になった)、平安時代(遣唐使の廃止)、江戸時代(鎖国)といった閉ざされた時代に独自の発展を遂げてきた。その美意識の特徴は、間(ま)・暈(ぼかす)・非対称・歪みや壊れ・うつろい・拡大と縮小の6つのキーワードで語ることができるのではないか」(三田村氏)、「中国は国土が広く、56もの多民族の国。中国の美を一言で説明するのは難しいが、芸術の種類を大別すると、宗教芸術・宮廷芸術・文人芸術・民間芸術・民族芸術があり、芸術の特徴は、(1)写意性を重視、(2)表現性を強調、(3)神韵を与える、(4)超然を表現、(5)多様かつ調和がとれている ことが挙げられる」(張氏)、「韓国の美の特徴は、柳宗悦の唱えた『悲哀の美』『白の美』とされることが多いが、それだけではないと疑問に思うようになった。金属工芸や陶芸、建築などすべてのジャンルにわたり、食や衣など暮らしの中で重んじられてきた五色五法をベースにした表現がみられる。多色(補色も多用)を用いながらも調和がある点に、豊かな韓国の自然美-とくに初秋の山々の彩りの影響を感じる」(周氏)と論じた。
井谷善恵・多摩大学講師は「ヨーロッパが観た、東アジアの芸術文化」と題し、ヨーロッパ人が憧れた東方(Orien)とは、「日が上る国」を指し、「1375年ごろから言葉として登場する」と述べ、それ以降の15世紀ごろから絵画にも中国の磁器・日本の漆器などが描かれることを具体的な作品を挙げて紹介。やがて、「ヨーロッパにおける東洋への憧れは、大西洋航路での交易にともない、アメリカ大陸へも広がっていった」と述べた。ⅱ) シンポジウム コーディネーター:井谷 善恵 パネリスト:三田村有純、張夫也、周炅美 シンポジウムは、井谷氏をコーディネーターに、講演した3氏が登壇。「これからの世代には、互いの文化を尊重し合い、もっといい方向に進んでいってほしいと伝えたい」(三田村氏)、「このような機会を縁として、(各国の芸術家が)会って、話して、触れ合うという機会をもっと増やしてほしい」(井谷氏)との発言があり、また、三田村氏が講演で指摘した「日本の美意識の6つの特徴」については、たとえば「間」については、「魚々子技法をみると、(唐代のものなどとは違い)韓国のものは、ぎっしりと埋め尽くすということにこだわっていない面がある。おおざっぱな国民性もあるかもしれないが」(周氏)、「中国でも特に宮廷文化では『間』は非常に重視された。日本人が考える『間』と必ずしも同じではないかもしれないが、ほかの国でもそれぞれの考え方での『間』があるのではないか」と述べるなど、「根っこは同じで、違う」三カ国の文化について活発な意見交換がされた。 最後に、司会の須田賢司氏・漆芸家が「薬師寺のご本尊である薬師如来の台座には、東西文化交流の証が刻み込まれている。今回薬師寺で、このような機会が持てたことを改めて意義深いことと思う」としめくくった。
(3) 紙上座談会(11月17日 於:読売新聞東京本社) 三カ国の委員長および宮田理事長をパネリストに、読売新聞東京本社社長老川祥一氏の司会で、フォーラムにちなんだ紙上座談会を実施。同紙11月29日(月)付夕刊にて内容が掲載された。
[2010年11月29日(月)読売新聞 夕刊]
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