[活動紹介] 事例紹介

尼門跡寺院の文化財保存修復事業


光照院門跡所蔵“絹本著色弁財天像”

 明治時代以前に皇室から皇女が出家した際、その尼寺にさまざまな芸術的価値の高い日用品(工芸品や道具類、人形、衣装、絵巻物、絵画、屏風、書籍など)が持ち込まれました。明治政府になり、神仏分離行政によってこの格式の高い寺々も皇室や政府の保護が得られなくなり、財政的にも恵まれない状況が続いたまま、現在に至っています。小宮廷とまでいわれた尼門跡寺院は、京都、奈良に13カ寺あります。その所蔵する宝物の文化財は修復保存の必要に迫られています。
 これら尼門跡寺院の問題に最も精通している研究者の一人がアメリカ人のバーバラ・ルーシュさん(BARBARA RUCH)です。ルーシュ先生はコロンビア大学の中世日本研究所長を務め、研究論文を発表したり、アメリカで展覧会も開き、自ら保存運動に取り組んでおられます。
 財団は、ルーシュ先生を中心に日本の専門家が加わった委員会で調査・推薦された、各尼門跡寺院の修復対象文化財について、平成12年度より順次修復のための助成を行ってきており、これまでに、住友財団、WMF、日本郵政グループ、松下電器産業(現:パナソニック)及び五都美術商連合会のご支援をいただきました。

 なお、本事業は平成22年度より、東芝プラントシステムのご支援をいただき実施しております。

これまでに次の文化財が修復されました。(平成30年3月末時点)

光照院 南無観世音(軸装)、弁財天像(掛軸)
大聖寺 唐子遊戯図、女房三十六人歌合屏図
中宮寺 霰肩衝釜
曇華院 十六善神像(掛軸)、地蔵盆竿掛供養仏厨子、仏涅槃図(掛軸)、十界双録、紫と萌葱頭紋紗地牡丹、唐草文様九条袈裟
宝鏡寺 仁孝天皇御所持品御棚、阿弥陀堂障壁画
本光院 地蔵菩薩錫杖、世継観世音菩薩像(掛軸)
慈受院 金剛薩像、新清和院御念持仏
円照寺 葡萄文打敷(東福門院御着衣)
霊鑑寺 御奈良院宸翰、普賢院宮御壽像(掛軸)
法華寺 尼僧人形法衣、七草絵巻
光雲寺 木造東福門院坐像
三時知恩寺 二階厨子
霊鑑寺 東福門院十二単
真如寺 本覚院宮御像、高徳院宮御像、月鏡軒御像、仙寿院宮御像
中宮寺 源氏物語図屏風
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